神経を守る治療
神経を守る神経(歯髄)保存療法について
歯髄保存療法とは
歯の中には、神経や血管が入っている場所があります。それが歯髄と呼ばれるものです。もし虫歯が進んで歯髄に近づくと、感染や痛みが起こることがあります。かつては、感染や痛みを防ぐために、多くの場合、神経を取り除く「抜髄」という治療のみ行われてきました。しかし、神経を抜くことは歯の寿命を縮めるリスクがありますし、噛んだ時の感じ方も変わるため、違和感を感じる方もいらっしゃいます。また、歯の耐久力も減少し歯根にひびが入り、割れるリスクが増大します。
しかし、最近の医学の進歩で、「歯髄保存療法」の精度がとても上がり、科学的にも信頼できるようになりました。つまり、今まで神経を抜かなければならなかった歯でも、神経を保存できる確率が高くなったのです。当医院では、可能な限り患者様の自然歯を保存することを方針としておりますので、歯の神経に対してもできるだけ保存できるか検討し、患者様と相談しながら治療内容を決めております。
歯髄保存療法には、虫歯の進行状態に応じておおまかに「間接覆髄法」「直接覆髄法」「部分断髄法」「全部断髄法」という4つの方法があります。必ず成功するわけではありませんが、適切な治療を行うことで、神経を保存し、歯の寿命を延ばすことができる可能性があります。
4パターンの治療方法
♦虫歯が進行している状態ですが、神経の露出が見られない場合 間接覆髄法(かんせつふくずいほう) 神経に近い深さまで虫歯を除去した後、薬剤で封鎖し神経を保存します。 |
♦虫歯が進行している状態で、神経の露出がみられる場合 直接覆髄法(ちょくせつふくずいほう) 神経が露出した場合に神経に直接薬剤を使用し、神経は除去せずに封鎖する方法です。 |
♦歯の神経の歯冠部(歯茎から上の部分)全ての神経に炎症が生じている場合 断髄法(だんずいほう) 歯冠部の歯の神経を除去し、歯根部の神経は保存する治療法です。生えたての永久歯など、少しでも神経が残った場合は歯根の成長が続くため、特に10代の子どもの歯に有効な治療法です。 |
♦歯の神経の一部に炎症が生じている場合 部分断髄法(ぶぶんだんずいほう) 炎症を起こしている部分の神経のみを除去して、できるだけ神経を保存する治療法です。 |
歯髄保存療法の注意点とリスク
虫歯が深く進行した場合…
- 歯の神経を全て除去するのか
- 歯髄保存療法で残せる神経は残すのか
- 歯髄保存療法を行うのであれば、どのような方法が適切で可能なのか
…という判断は非常に難しいです。私たち歯科医師は、詳しい診査・診断から科学的、生物学的根拠に基づいた治療法を選択し、それを技術的に行っています。しかし、この歯髄は残すべきかという明確な確定診断が難しいのが現状です。歯科診療でもっとも重要なことの一つは「診断」です。この診断が術前、そして術中にも「不明確」であるため、後々問題が起きてしまうリスクがあります。
虫歯、外傷などで、歯髄が露出してしまうほど大きなダメージがある歯は、歯髄にもトラブルが生じているかもしれないため、保存せずに取り除いた方がよかった可能性があることは否定できません。
患者様にはぜひ、歯髄保存療法のメリットとデメリットを理解していただいた上で、担当医に相談し、より良い選択をしていただければと思います。